2012年4月6日金曜日

甲状腺機能低下症Q&A(詳細解説)


甲状腺機能低下症Q&A(詳細解説)

甲状腺の病気に関しては、当院の解説よりも詳しいものが、ネット上でたくさんあります。
そちらも参考にしてください。
01)甲状腺機能低下症とはどんな病気ですか?
02)甲状腺機能低下症の症状と所見は?
03)甲状腺の病気は他の病気と間違われやすいというのは本当ですか?
04)甲状腺低下症の頻度は?
05)甲状腺機能低下症を見つけるいい方法が(検査)がありますか?
06)橋本氏病が疑われる場合に行う検査は?
07)どんな治療方法がありますか?
08)治療薬の副作用は大丈夫ですか?
09)治療中の注意点は?
10)軽症でも治療の必要がありますか?

11)薬はいつまで続けるのですか?

参考資料
内分泌疾患の拾い上げとマネジメント medicina 2002.8月号 
甲状腺疾患 エビデンスに基づいた日常診療 medical practice 2002年2月号


手術に直面している子供たちが理解するのに役立ち

Q1:甲状腺機能低下症とはどんな病気ですか?
 A:甲状腺のホルモンが不足したためにおこる病気です。
 ほとんどの甲状腺機能低下症は、「甲状腺を攻撃する抗甲状腺抗体というものができて起こる自己免疫疾患」です。
自己免疫反応のためにおこる慢性の甲状腺炎を「橋本氏病」と呼んでいます。このホルモンが低下すると元気がなくなり、動脈硬化などの老化が早まります。 甲状腺ホルモンは全く無くなると、1ヶ月ぐらいしか生きられないと言われています。甲状腺機能低下症では甲状腺は萎縮して小さくなることが多いため、甲状腺の腫れはあまりみられません。
  甲状腺の働きが高度に低下すると、むくみや活動性の低下がはっきりとでます。しかし、軽症ではなかなか気づかれにくく、中等症でも見落とされたり、別の病気と誤診されることが大変多い病気です。日頃から「甲状腺機能低下症の可能性はないか」と疑うことが大事です。疑いさえもてば、あとは簡単な血液検査で確認できます。
2003.02.
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01記
Q2:甲状腺機能低下症の症状と所見は?
 A:色々ありますが、病状の進行がとてもゆるやかで、老化現象と勘違いして、病気と気づかない人が多い。
  ○甲状腺機能低下症の症状
全身症状としては、「元気がなくなる」、「疲れやすい」、「脱力感」、「寒がり」、「体重増加」、「食欲低下」、「便秘」など。
精神症状は 、「記憶力低下」、「集中力低下」、「動作が緩慢」、「痴呆ではないが、一見痴呆と間違われる」など。
皮膚症状は 、「発汗低下」、「皮膚乾燥」、「黄色皮膚(カロチン血症)」など。
顔つきでは、「腫れぼったい」、「大きな口唇や大きな舌」など。
下肢では「むくみ(押してもへこみが残らないことが多い)」が起こりやすい。
髪や眉は、「白髪が増加」、「脱毛」、「眉の外側1/3が薄い 」など。
そのほかの症状では、「声が低く」、「しわがれ声」、「月経過多」、「筋力低下」、「こむら返り」など。

 ○甲状腺機能低下症の一般検査異常
 甲状腺機能低下症は、一般検査の異常から疑われ、見つかることも少なくありません。
「総コレステロール上昇」、「中性脂肪上昇」、「CPK上昇」、「血沈亢進」、「γ-グロブリン上昇」などの血液検査の異常。胸部 レントゲンでの「心拡大(俗にいう心肥大)」、心電図では「徐脈」、「低電位」、「T波平低、T波陰性化」など。
 ただし、上記の症状は甲状腺機能低下症に特徴的というわけではなく、他の病気や加齢とともに増える所見です。
また、症状や検査の異常は全例にあるわけではなく、強くでる人と余りでない人があります。特に、高齢者の場合では症状が乏しいことが多いので、少しでも疑われたら、一度TSHを検査したほうがよいでしょう。

甲状腺機能低下症確認のための検査
 ごく軽症の甲状腺機能低下症でも甲状腺刺激ホルモン(TSH)は高値になります。軽症以上の甲状腺低下症では血中甲状腺ホルモン(遊離T3、遊離T4)が低下します。さらに、橋本氏病では抗甲状腺抗体(抗TPO抗体、抗Tg抗体)が陽性になります。

2003.2.1記


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Q3:甲状腺の病気は他の病気と間違われやすいというのは本当ですか?
 A:甲状腺機能低下症の患者さんは多彩な症状でいろいろな診療科を受診し、誤診されている人も多いと言われています。 
  単なる高コレステロール血症として治療されることも少なくないと言われています。軽症の甲状腺機能低下症(TSHが50〜99U/ml)では約40%に、重症の甲状腺機能低下症(TSHが100U/ml以上)では約75%に高コレステロール血症がみられます。高脂血症と言われた中年以降の方は、一度、甲状腺機能低下症の所見がないかどうか確認し、疑いが少しでもあれば血液中のTSHを調べておきましょう。
 また、「単なる浮腫」、「心不全」として、利尿剤を投与されていることもあります。

診療科

症状。検査値異常

内科全般

全身倦怠、無気力、高コレステロール血症、貧血、痴呆

神経科

筋肉痛、筋力低下、けいれん、声がれ

精神科

無気力、痴呆、うつ状態

整形外科

筋肉痛、関節痛、

耳鼻科

難聴、耳鳴り、めまい、声がれ

皮膚科

皮膚乾燥、毛髪脱毛

循環器科

脈拍数が遅い、心不全、息切れ、胸痛、むくみ、心電図異常、心肥大

消化器科

食欲低下、便秘、肝臓障害(AST、ALT、LDH、γ-GTP上昇)

婦人科

月経過多、無月経

2003.2.1記


Q4:甲状腺低下症の頻度は?
 A:治療が必要な人の頻度は人口の約1%と推測されています。年齢とともに増加します。
  症状が徐々にでるために、見落とされることが極めて多いので、注意が必要です。まずは、甲状腺機能低下症を疑うことが大事です。

2003.2.1記



Q5:甲状腺機能低下症を見つけるいい方法が(検査)がありますか?
 A:血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定が簡単で、病気を見逃すことの少ない最もよい方法です。。
  甲状腺の働きを調べるには、直接甲状腺ホルモン(FT3、FT4)を測ればよいと考えそうですが、甲状腺ホルモンを測定するよりも甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定した方が、甲状腺の働きの軽度の異常でも見落とすことがなくなります。TSH検査のみで、FT3、FT4を測定しなかったために見落とす可能性のある甲状腺の機能障害はごくわずかと言われています。
  甲状腺専門病院で、TSHが正常な1225人のうち甲状腺機能に異常があったのは1人のみだったと言うことです。
(大阪福祉事業財団すみれ病院 浜田 昇談)
  TSHの異常が確認された後に、FT3、FT4や甲状腺の抗体検査などの他の検査を追加すればよいでしょう。

2003.2.1記


Q6:橋本氏病が疑われる場合に行う検査は?
 A:甲状腺の働きの検査に加えて、甲状腺の抗体検査を行います。
 甲状腺の働き具合を見るために、甲状腺刺激ホルモン(TSH)や甲状腺ホルモン(FT3、FT4)などを調べます。
甲状腺機能低下症の大半は抗甲状腺抗体による橋本氏病ですので、各種の抗甲状腺抗体を調べます。
従来は間接凝集反応を利用したサイロイドテスト、マイクロゾームテストの検査を行っていました。 しかし、最近はRIAという測定方法による甲状腺抗体を調べる検査が主流です。
  TgAb(抗サイログロブリン抗体:橋本病の手術時の組織検査で陽性率82%)をまず調べ、これが陰性の時はTPOAb(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体:同56%)を検査するのがよいと言われています。

2003.2.1記



Q7:どんな治療方法がありますか?
 A:甲状腺ホルモンの補充を内服薬として行います。
甲状腺機能低下症を放っておいたら
 コレステロールが増え、動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患が増加します。 また、身体がむくみ、さらにひどくなると心臓のまわりに水が溜まり、心不全になることがあります。

甲状腺機能低下症の治療
1)内服療法−−−不足している甲状腺のホルモン剤を内服します。
  普通1日に1〜2錠を飲みますが、ホルモンのバランスを見ながら薬を加減してゆきます。 薬は数カ月から数年の間だけ飲んだら後はいらなくなる人もまれにありますが、多くの場合は一生薬を続けなければなりません。 薬を飲むことは目が悪い人が眼鏡をかけるのと似ています。 眼鏡がないと色々と不都合がでますが、眼鏡さえかけていれば何も問題はありません。 ホルモンのバランスがとれればあとは、3ヶ月から半年おきの血液検査で十分です。 飲み忘れなどが無いように継続して下さい。

2003.2.1記


Q8:治療薬の副作用は大丈夫ですか?
 A:甲状腺ホルモンはもともと体の中にあるものですから、適量なら副作用の心配はありません
  甲状腺ホルモン量が適正ならば、甲状腺機能亢進症の治療薬と違って、副作用が問題となることまずありません。

  2003.2.1記


Q9:治療中の注意点は?
 A:以下で解説します。
○甲状腺疾患の検査
 ホルモンのバランスを調整するために、はじめは1週間〜1ヶ月おきに血液検査が必要です。
その他に、甲状腺超音波、レントゲン検査、シンチグラフィーなどの検査を必要に応じて行います。

○甲状腺疾患療養のポイント
 1)食事は、検査の前などに特別にヨード制限食とすることがありますが、日常の生活では特に制限はありません。
     海苔や海産物を好んで多食したり、逆に極端に制限するとかえって病状を悪くすることがあります。
  2)処方された薬は副作用が出ない限り、根気よく続けて下さい。
     病気の症状も薬をのめば半月から一月で消えてしまいますが、ここで治ったと思って薬をやめないことです。
  3)規則正しい生活をして、適度な運動と適度な休養をとってください。
     妊娠をきっかけに病気の状態が変わることがよくあります。
    妊娠は医師と相談して、治療との時期の良いときに計画できるようして下さい。

2003.2.1記



Q10:軽症でも治療の必要がありますか?

 A:程度にもよりますが、たとえ甲状腺ホルモンが正常範囲でも、TSHが大きく上昇したものは治療した方がよいでしょう。

 どれくらいなら薬がいるか決まりはありませんが、TSHが大きく上昇したものは治療した方がよいという専門家の意見があります。
2003.2.1記


Q11:薬はいつまで続けるのですか?

 A:通常、一生続ける必要があります。
 無痛性甲状腺炎では、最初に甲状腺機能亢進症となり、後に甲状腺機能低下症が起こりますが、その後に回復する可能性があります。この場合は薬は不要です。橋本氏病で抗甲状腺抗体価が低くなった場合には、甲状腺ホルモンを中止できる可能性があります。この場合、徐々に甲状腺ホルモンの量を減量してゆき、TSHが上昇しなければ中止できます。こういった方の1/5が、甲状腺ホルモンを数年使った後に中止できることがあります。この場合でも、再発しないかどうか、観察しておく必要があります。
  しかし、以上は例外です。ほとんどの甲状腺機能低下症は永続的なものなので、一生甲状腺ホルモンを補充しなければなりません

2003.2.1記


 



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